「光州5・18」

 韓国南西部の光州市で1980年に発生した「光州事件」をモチーフとした映画「光州5・18」(2007年、キム・ジフン監督)。事件の10日間を克明に描いた初の作品というが、わずか28年前、隣国で軍が市民に銃を向けたという事実に強い衝撃を受けた。
 舞台は1980年5月の光州。タクシー運転手のミヌ(キム・サンギョン)は、弟ジヌ(イ・ジュンギ)の親代わりを務め、看護婦のシネ(イ・ヨウォン)に好意を寄せていた。政治には関心がなかったミヌだが、クーデターで権力を掌握したチョン・ドファンの退陣を求めるデモに参加したジヌが銃弾に倒れたことで、軍と対峙する市民軍の一員として銃を取るが…。
 軍に父親を殺されて涙を流す男児。「忘れないで」と訴えて死んでいく市民軍の兵士たち。「暴徒」と呼ばれて「暴徒じゃない」と軍兵士らに銃を向けるミヌ。軍との最後の戦いを前に、一度は戦列を離れながらも、仲間たちのことを思って戦線に復帰するミヌや市民たちの姿も描かれていた―。
 極限下で実際に繰り広げられたであろう、こうした市民の決断や行動、さまざまな人間模様が、作品では一つずつ、丹念に積み重ねられていく。物語が進むにつれて、憤りと悲しさで胸がいっぱいなった。
 そして、ラストシーンの幻の婚礼写真。悲劇の後だけに、シネの悲しげな表情に心を強く打たれた。
【参考情報】
 (1)「ワウ!コリア」内の「韓辞典」に「光州事件」の説明があります→http://www.wowkorea.jp/dictionary/0003/0001/0002/
 (2)光州事件を扱った作品のうち、テレビドラマ「砂時計」はキム・ジョンハク演出、チェ・ミンス主演で、放送時に最高視聴率が60%を超えた伝説のドラマだという。