「さくら隊散る」

被爆から63回目の夏。筆者は今年も8月6日午前8時15分に広島、8月9日午前11時2分に長崎の方角を向き、犠牲者の冥福を祈った。 この時期に、今年は新藤兼人監督の「さくら隊散る」(1988年)を鑑賞した。第二次大戦中に全国各地で公演した移動…

「クライマーズ・ハイ」

日航機墜落事故の報道にかかわった群馬県の地方紙社員の人間模様を描く、横山秀夫原作の「クライマーズ・ハイ」が、原田眞人監督によって映画化された。未曾有の大事故に遭遇した新聞記者たちの姿と、新聞社内の人間模様を絡み合わせた原作には引き込まれた…

劇場版ポケットモンスター「ギラティナと氷空の花束シェイミ」

子供たちに大人気のアニメ「ポケットモンスター」の劇場版を、初めて映画館で鑑賞した。シリーズ11作目の最新作「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール/ギラティナと氷空(そら)の花束シェイミ」(湯山邦彦監督、2008年)は、サトシやピカ…

「崖の上のポニョ」

宮崎駿監督の4年ぶりの新作映画は「崖の上のポニョ」(2008年)。プレス資料によれば、アンデルセンの「人魚姫」の宗教色を払拭し、幼い子供たちの愛と冒険を描く物語で、「神経症と不安の時代に立ち向かおう」というのが今作の製作意図だという。 海辺…

「ダンサー」

東京・北千住の「東京芸術センター」で世界各国の名画を上映していると聞き、平日夜の最終回に足を運んでみた。大画面に音響も良い空間の中、計294席に観客は筆者と男性の2人だけ。係員に尋ねたら、「今日は特に(観客が)少ない」との答えだった。「貸…

「歩いても 歩いても」

「誰も知らない」の是枝裕和監督の新作は「歩いても 歩いても」(2007年)。阿部寛が演じる主人公が実家から帰る途中、母が忘れた関取の名前を思い出した後、「いつもちょっと遅い」と言うのだが、そのせりふを聞いたとき、映画のテーマや奥深さが一気に…

「光州5・18」

韓国南西部の光州市で1980年に発生した「光州事件」をモチーフとした映画「光州5・18」(2007年、キム・ジフン監督)。事件の10日間を克明に描いた初の作品というが、わずか28年前、隣国で軍が市民に銃を向けたという事実に強い衝撃を受けた…

「イースタン・プロミス」

映画の冒頭、床屋で男が首を切り裂かれる場面に、いきなり度肝を抜かれた…。ロンドンの裏社会のロシア・マフィアを題材にしたデビッド・クローネンバーグ監督の「イースタン・プロミス」(2007年)。壮絶な殺害・暴力シーンの数々には、バイオレンス映画…

「シークレット・サンシャイン」

チョン・ドヨンがカンヌ国際映画祭で最優秀主演女優賞に輝いた韓国映画「シークレット・サンシャイン」(イ・チャンドン監督、2007年)。 シングルマザーのシネは、ソウルから亡夫の故郷ミリャン(密陽)に移るが、やがて息子が誘拐されて殺される。この…

「休暇」

刑務所のベテラン刑務官の平井(小林薫)は、シングルマザー美香(大塚寧々)との結婚を決める。2人の結婚式が迫る中、死刑囚の金田(西島秀俊)の執行命令が下る。執行時の「支え役」を務めれば1週間の特別休暇が与えられるのだが、平井は新婚旅行に出掛…

「高校生友情プライス」、来年6月でキャンペーン終了

映画料金が高校生3人以上で1人当たり1000円となる「高校生友情プライス」は、映画関連4団体(日本映画製作者連盟、外国映画輸入配給協会などで構成)が2005年から展開中のサービスだが、2009年6月末でキャンペーンが終了することになった。 …

「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」

黒澤明監督作品をリメークした「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」(2008年、樋口真嗣監督)。戦国時代に隣国に滅ぼされた国の姫と侍大将が、百姓2人を同伴して敵領を抜け、同盟国へと向かう―というストーリーの大筋はオリジナルと変…

「大いなる陰謀」

ロバート・レッドフォードが7年ぶりに監督を務めた「大いなる陰謀」(2007年)。(1)ジャーナリストによる政治家へのインタビュー取材(2)大学教授と無気力な学生の議論(3)アフガニスタンの前線の状況―を重層的に絡ませ、米国の対テロ戦争をめぐ…

「ノーカントリー」

今年の米アカデミー賞で最優秀作品賞、最優秀監督賞などを獲得したコーエン兄弟監督の「ノーカントリー」(2007年)。最優秀助演男優賞を獲得したハビエル・バルデムふんする危険な殺し屋は、ただただ恐ろしく、彼に追われるルウエリン・モス(ジョシュ…

「天軍」

現代の韓国と北朝鮮の兵士らが、16世紀の李氏朝鮮時代にタイムスリップし、李舜臣と出会う―。韓国映画の「天軍」(2005年)は、日本の「戦国自衛隊」を想起させるストーリーだが、ありえない運命を共にする韓国と北朝鮮の兵士の葛藤や友情、李舜臣が英…

「さくらん」

江戸時代の吉原遊郭を舞台に、一本気なおいらんの姿を描く「さくらん」(2007年)。フォトグラファーとして活躍する蜷川実花監督が、安野モヨコの漫画を映画化した作品で、原色を多用した斬新な色彩表現、3人のおいらんの多様な人生模様、土屋アンナの…

「夕凪の街 桜の国」

こうの史代の漫画が原作の「夕凪の街 桜の国」(2007年)。62年前、広島に投下された原爆で被爆した女性と、その姪に当たり、現代で自分のルーツを見詰め直す女性にスポットを当てた2つの物語から成る。佐々部清監督は原作の設定に若干の変更を加えて…

「ペイチェック」

インターネットの「中国情報局」によると、ジョン・ウー監督が中国・三国時代の「赤壁の戦い」を撮影することになり、金城武、トニー・レオン、ビッキー・チャオなど、中国語圏のスターが多数出演するそうです。周瑜をトニー・レオン、諸葛亮孔明を金城武が…

「硫黄島からの手紙」

筆者は1990年代に被爆地・長崎で取材活動をした経験があるが、被爆50周年を過ぎた後は、被爆体験の風化を危ぐする声が多かったことを記憶している。今年の夏で太平洋戦争の終戦から62年。戦争体験者の高齢化が進む中、長崎のみならず、日本国内で戦…

「日本一のゴリガン男」

3月27日、植木等さんが亡くなった。同28日付の朝日新聞朝刊社会面に掲載された、「無責任男が受けたのも、根がまじめだから」という放送作家のはかま満緒さんのコメントが印象的だった。合掌。 クレイジーキャッツはテレビ、映画、音楽など各分野で多大…

「ラブストーリー」

運命というのは 努力した人に 偶然という橋を架けてくれる偶然とは 努力した人に 運命が与えてくれる橋です 韓国映画「猟奇的な彼女」に出てくるせりふです。個人的な話で恐縮ですが、最近、事が思うように運ばず、落ち込んでいました。そんな中、上記のせり…

「ロスト・イン・トランスレーション」

ソフィア・コッポラ監督の新作映画「マリー・アントワネット」が公開されています。2006年のカンヌ国際映画祭での評判はいまひとつだったようですが、映画評論家の渡辺祥子さんは1月19日付の日本経済新聞夕刊で、「マリー・アントワネットの生きた日…

「NANA」

矢沢あいの人気漫画を実写化した「NANA」(2005年)。人気歌手の中島美嘉と、演技力に定評がある宮崎あおいのダブル主演で、対照的な2人の女性の恋や友情を描く一作だ。興行収入が40億円に上る大ヒットを記録したが、その成功の要因は何か? 適材…

「ラスト・サムライ」

10日、テレビ朝日系で放送された「ラスト・サムライ」(2003年)を再見しました。渡辺謙のハリウッド進出の端緒となった作品だけあって、彼の演技は見事です。個人的には、息子と最後の別れをする際の勝元の表情が忘れられません。以下、公開当時に書…

「トゥー・ウィークス・ノーティス」

「two weeks notice(トゥー・ウィークス・ノーティス)」。「2週間前の退社勧告」の意味で、米国では社員が退社に際し、2週間前に会社に通告するのが通例だという。その言葉が映画のタイトルになった「トゥー・ウィークス・ノーティス」(2002年)は…

「陽はまた昇る」

寺尾聰主演の「半落ち」などを手掛けた佐々部清監督のデビュー作「陽はまた昇る」(2002)は、家庭用ビデオの開発や、VHS方式を世界規格とすることに情熱を注いだ男たちの姿が描かれる。NHK総合で放送された「プロジェクトX」でも紹介された題材…

「トーク・トゥ・ハー」

先週、NHK・BS2で「オール・アバウト・マイ・マザー」を再見しました。スペインのペドロ・アルモドバル監督といえば、1980年代の作品群は奇抜な面が突出していた感ありでしたが、「オール・アバウト・マイ・マザー」と「トーク・トゥ・ハー」で見…

「リンダ リンダ リンダ」

高校生活最後の文化祭で演奏を披露するため、練習を重ねてきたガールズバンド。本番3日前にバンドが空中分解してしまい、残された3人は韓国からの留学生をボーカルに迎え入れた。ブルーハーツの楽曲をコピーをすることになり、4人は猛練習して本番を目指…

「クライング・フィスト」

韓国の名優チェ・ミンシクの出演作として選んで鑑賞した結果、彼の俳優としての覚悟と演技力の奥深さを再確認しつつ、共演のリュ・スンボムの負けず劣らずの存在感に驚かされた。「クライング・フィスト」(2005年)は、最悪の状況に転落した2人の男の…

「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲」

テレビアニメの放送開始から15年目を迎えた「クレヨンしんちゃん」。ちょっと下品な描写から、日本PTA全国協議会調査で「子どもに見せたくない番組」の上位の常連になっている。一方で、教科書の題材として採用されたり、映画シリーズ「嵐を呼ぶアッパ…