「ペイチェック」

 インターネットの「中国情報局」によると、ジョン・ウー監督が中国・三国時代の「赤壁の戦い」を撮影することになり、金城武トニー・レオン、ビッキー・チャオなど、中国語圏のスターが多数出演するそうです。周瑜トニー・レオン諸葛亮孔明金城武が演じる一方で、ジョン・ウー監督とは「男たちの挽歌」でコンビを組んだチョウ・ユンファは降板したとか。公開は2008年と聞きますが、三国志ファンにとっては公開が待ち遠しい一作です。
 ジョン・ウー監督には、2004年の来日時にインタビューした経験があります。当時執筆した記事を再編集して掲載します。

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◎「あきらめず、希望を持って」
=映画「ペイチェック」のジョン・ウー監督
 米映画「ペイチェック消された記憶」は、「ブレードランナー」などで知られるSF作家フィリップ・K・ディックの短編小説が原作。記憶を消すことで多額の報酬を受けているフリーのエンジニアが主人公だ。監督は、「男たちの挽歌」「M:I−2」などを手掛け、アクションの名手として知られるジョン・ウー。「運命を切り開く主人公に、何事もあきらめず、希望を持つことの大切さを、メッセージとして込めた」と語る監督に、作品や映画への思いを聞いた。
◇「運命切り開く主人公に共感」
 映画の舞台は、国家や企業が機密保持に腐心している近未来。フリーのコンピューターエンジニア、マイケル・ジェニングス(ベン・アフレック)は、任務終了後に高い報酬を受け取る代わりに、その間の記憶を抹消するという契約で、ハイテク企業を渡り歩き、極秘プロジェクトにかかわり続けている。
 そして今回、巨大ハイテク企業「オールコム社」と新プロジェクトの契約を締結。3年間の記憶を消すことで、9200万ドルを受け取ることになる。だが、プロジェクトが終了した3年後、同社側から渡されたのは、カギや腕時計など、がらくた同然の19のアイテムだった。マイケルは、記憶を失った間、自分が何をしていたのか突き止めようと行動を始めるが−。
 テンポの良いアクションを得意とすることで知られるジョン・ウー監督。今作でも、その迫力は満点で、見応えがある。「マイケルはスーパーヒーローではなく、人生を楽しむ現実的な男。アクションシーンでは賢く戦い、自分の運命を切り開いていく姿には、わたし自身が勇気付けられたよ」。主人公のキャラクターへの思い入れは、ひときわ強い様子だ。
◇「映画は自己表現の大切な道具」
 「黒澤明、デビッド・リーン、サム・ペキンパー…。映画を作るときは、影響を受けた彼らに、常にオマージュを捧げている」。ジョン・ウー監督は、映画に対する深い愛情をこう表現する。「ペイチェック」の場合、撮影中に念頭にあったのは、「アルフレッド・ヒッチコック監督にオマージュを捧げたい」という思い。「だから、人間描写に重点を置いたサスペンス、ロマンチックなラブストーリーの部分にもフォーカスを当てたんだ」
 香港でデビュー、活躍した後、“主戦場”を米国に移したジョン・ウー監督。「香港」と「ハリウッド」。米国とアジアの“映画の都”の製作スタイルは特徴を大きく異にすると、監督は感じている。
 「香港の撮影スタイルは、とても自由。監督が作品をコントロールできるし、脚本が完成してなくても、撮影を始めてしまう。対するハリウッドは、映画会社が作品の内容に口を出そうとするから、最初はものすごく苦労した。でも、俳優もスタッフもプロフェッショナルだし、製作資金が巨額だから、あらゆる表現手法が採用できるんだ」
 映画製作の際は、「世界中の人々を幸せにしてあげたいから、仲の良い友人のことを思い出しながら撮影に臨んでいる」という。「映画は、わたし自身を表現するための大切な道具。才能あふれる人々との仕事を通じ、たくさんのことを学ぶことができるから、映画を作るのが大好きなんだよ」。丁寧な語り口の中から、映画への思いが次々とあふれ出してきた。(了)