「リンダ リンダ リンダ」

 高校生活最後の文化祭で演奏を披露するため、練習を重ねてきたガールズバンド。本番3日前にバンドが空中分解してしまい、残された3人は韓国からの留学生をボーカルに迎え入れた。ブルーハーツの楽曲をコピーをすることになり、4人は猛練習して本番を目指して―。
 女子高生たちの心の揺れ、友情、何かを頑張ることのすがすがしさ、そし異文化交流。「リンダ リンダ リンダ」(2005年)は、淡々としたタッチの中に、多彩なテーマが盛り込まれた青春映画である。
 劇中、登場人物はあまり感情をあらわにしない。山下敦弘監督の控えめな演出は、ラストの文化祭のステージで4人を生き生きと描くための仕掛けだったのか。一方で、4人の微妙な感情の揺れは的確にとらえており、監督の手腕は確かだ。
 出演者に目を向けると、演技派のぺ・ドゥナ前田亜季、存在感を示した香椎由宇、実際にバンドのベーシストとして活動する関根史織などという顔ぶれ。安定感と意外性が同居した見事なキャスティングとの印象を受ける。
 中でも秀逸だったのがぺ・ドゥナ。その自然な演技からは、ユーモアや愛らしさが醸し出されている。カラオケ店でのドリンクをめぐる店員との掛け合いに象徴されるように、コメディエンヌとしての力量は抜群。そして、ブルーハーツの歌をマスターしたのも見事!ぺ・ドゥナなくして語れない1作だ。