「ワイルド・スピード」

 格好いい改造車にイケメン、そして美女。物語を彩るこれらのエッセンスに加え、友情や恋など人間ドラマがしっかり描き込まれていれば、映画としての魅力が増幅されるのは当然のことだろう。ストリートレースに情熱を注ぐ若者たちの姿を描く「ワイルド・スピード」(2001年)は、実に魅惑的で、カーアクション映画の秀作である。

 舞台はロサンゼルス。大金を賭けたストリートレースで、凄腕のドミニクに挑むブライアン。続発するトラック強盗事件の解決のために潜入捜査を始めたのだが、人間味が豊かなドミニクに友情を感じ、彼の妹ミアとも心を通わせるようになる―。基本線がシンプルで小気味よいストーリー、迫力あるカーレースやカーチェイスの模様などが印象深い。

 映画のポイントとなるのは、ブライアンの内面である。すなわち、ドミニクが強盗事件の容疑者かもしれないという疑念と、潜入捜査という目的を伏せてミアとの関係を深めていくことへの苦悩が、物語の起伏を生み出すことになるのだが、これらを表現するポール・ウォーカーの演技は的確だ。そして、ドミニク役のヴィン・ディーゼルの存在感は抜群で、ミア役のジョーダナ・ブリュースターもとても美しく、いずれもブライアンの葛藤をより際立たせている。

 多種多様な人種のキャラクターが満遍なく登場するのも、この映画の特徴と言える。続編の「ワイルド・スピードX2」と合わせ、世界中でヒットした要因の一つなのかもしれない。