「タッチ」

 若手女優の中でも清純派として人気が高い長澤まさみ。「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年)で演じた高校生は、清潔感と薄幸さを併せ持つ“はまり役”だったが、その魅力はどのように進化していくのだろうか? 「セカチュー」に続く彼女の主演映画は、あだち充原作の青春物語「タッチ」(05年)。

 長澤がふんするのはヒロイン南。彼女の幼なじみで双子の達也・和也兄弟役は、実際に双子の斉藤祥太と慶太。3人の三角関係、高校野球で甲子園を目指していた和也の死、和也の意思を継ぐ達也の奮闘などが、犬童一心監督によって手堅く描かれ、全体としては破綻のない青春映画に仕上がっている。

 原作漫画や映像化されたアニメを振り返ると、和也の死後、南と達也の心の微妙な揺れや関係の深化が、恋やスポーツのライバルを絡めるなどして、丁寧な筆致で描かれていた。一方で、映画版の主軸は、南と達也の恋愛感情に絞り込まれている。映画の上映時間を考慮すれば最善の選択だったろうが、青春時代の若者の心模様がふんだんに盛り込まれた原作の魅力を超えてはいない。

 しかし、長澤だけを見ると、彼女特有の清潔感は南のイメージと見事にマッチしており、彼女の存在なくして成立し得ない映画であることは明らか。若手清純派の筆頭格の地位は、着実に固めつつあるようだ。もっとも、将来のために演じる役の幅を少し広げていい気もするけれど。