「レオン」

 フランス人のリュック・ベッソン監督が、米国で初めて撮影した「レオン」(1994年)。緩急のある巧みなストーリー展開、完ぺきな配役や設定、エリック・セラによる哀感漂う音楽などの相乗効果は抜群。完成度はベッソン作品の中でも随一と言えるのではないか。

 孤独な殺し屋レオンと、極悪麻薬捜査官に家族を皆殺しにされた少女マチルダ。その純愛が際立つのは、バイオレンスシーンが壮絶であればこそ、ゲイリー・オールドマンの悪役ぶりが異様かつ冷徹であればこそだ。観葉植物のように大地に根を張らずに生きてきたレオンは、終盤で「大地に根を張って暮らしたい」と言うが、この変化はまさに「愛ゆえに」。しかし、マチルダを助けなければ、レオンの運命は別のものになっていただろう…。レオンに仕事を世話するトニーの「女は要注意だ」という言葉が重く響く。

 印象深いのは、冒頭に始まり、劇中もニューヨークの高層ビル群を見渡し、都会の雑踏を抜くショットが散見されること。若いときに渡米して映画製作を学んだ経験があるベッソンの、「アメリカ」への憧憬を象徴しているのではないか(余談だが『サブウエイ』は『メトロ』じゃない!)。

 「レオン」までの監督6作品で、技量を高め、生い立ちを自省し(=『グラン・ブルー』)、映画愛を深めたであろうベッソン監督。集大成となった「レオン」以降、監督が自身の趣味や愛を追求するようになったのは、自然の成り行きなのかもしれない。