「TAXi」

 最近、リュック・ベッソン監督について考え直している。「サブウエイ」「グランブルー」などを見直し、未見だった彼の製作・脚本作品「TAXi 」(1997年)を鑑賞した。

 主人公は、スピード狂のタクシー運転手ダニエルと、彼が乗せた女性の息子で冴えない刑事エミリアン、というコンビ。エミリアンにスピード違反で逮捕されたダニエルは、ドイツ人グループによる連続強盗事件の捜査に協力させられる。スピード狂と運転免許試験に落ち続ける2人の男の対比(女性との接し方も対照的)、リアルなカーチェイス、ユーモアのある会話劇。単純なストーリーながらもテンポ良い展開に引っ張られ、約90分があっという間に過ぎた。

 「レオン」以降のベッソン監督は、どちらかと言えばプロデュースの方に熱心なようだが、自身の趣味や“製作本能”に忠実で、興行的な成功を求める意識が強い気がする。それを言い換えれば、ストーリーも映像も、「外れ」はないけど守勢が見える、ということになるのだが…。自分の生い立ち、映画愛、米国(ハリウッド)への憧れなど、自分自身の“映画的原風景”を見詰め直しながら製作している印象の初期〜中期の作品群の方が、映画史的にも、多くの人の記憶の中にも残っているのは、当然のことなのだろう。

 ダニエル役のサミー・ナセリは「レオン」にも出演しているとか! その恋人役のマリオン・コティヤールも魅惑的だった。

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