「大いなる陰謀」

 ロバート・レッドフォードが7年ぶりに監督を務めた「大いなる陰謀」(2007年)。(1)ジャーナリストによる政治家へのインタビュー取材(2)大学教授と無気力な学生の議論(3)アフガニスタンの前線の状況―を重層的に絡ませ、米国の対テロ戦争をめぐる諸相を浮き彫りにした作品だ。
 共和党の有力上院議員アーヴィング(トム・クルーズ)は、アフガニスタンでの新たな軍事作戦を立案。実行に移されるが、その作戦に参加していた大学教授マレー(ロバート・レッドフォード)の教え子2人は、敵襲により極限状態に追い込まれる。エリートが立てた作戦で、戦地に赴くのはマイノリティだ…。
 一方、作戦に関する情報をアーヴィングにリークされたテレビジャーナリストのロス(メリル・ストリープ)は、世論操作に利用されていることを懸念し、報道すべきかちゅうちょする。
 レッドフォード監督は、マレー教授として「無関心の罪」を熱心に説く。監督の良心や生真面さはスクリーンからよく伝わってくるのだが、「政治的主張」とも受け止められるため、観客として気持ちの上で一歩引いてしまった。
 演技的な観点に立てば、上院議員役のトム・クルーズが魅力的。膨大なせりふを咀嚼した上でエリート臭を振りまいていて、俳優としての確かな技量を印象付けることに成功している。(了)