「NANA」

 矢沢あいの人気漫画を実写化した「NANA」(2005年)。人気歌手の中島美嘉と、演技力に定評がある宮崎あおいのダブル主演で、対照的な2人の女性の恋や友情を描く一作だ。興行収入が40億円に上る大ヒットを記録したが、その成功の要因は何か? 適材適所の見事なキャスティング、明快な人物描写、感情移入しやすいエピソードが豊富に盛り込まれていることなどだろう。
 歌手としての成功を目指す大崎ナナと、一途な性格の「ハチ」こと小松奈々。上京する電車の中で出会った同い年の2人は、やがてルームメートとして同居することに。恋人との別離を乗り越え、昔の仲間たちとバンド活動を再開するナナ。そして、同郷の恋人に振られてしまう奈々…。タイプの異なる2人は、互いを思いやり、補い合いながらきずなを深めていく。
 登場人物それぞれの個性が強い中、激しさと繊細さを併せ持つナナは多面的で、特に魅力的。持ち前の歌唱力を存分に発揮できることもあり、中島美嘉にとっては完ぺきな“はまり役”だ。
 一方の奈々は、純粋で、ミーハーで、やや独りよがりだけど思いやりがある、という難役。演じた宮崎あおいに対しては、配役が発表された際、漫画のファンの間で「イメージとは違う」との声も上がったというが、彼女は髪の色を変え、少し甘えた口調で演じるなどして役にアプローチ。それが奏功し、奈々の魅力も際立って見える。
 今作はナナのストーリーが中心で、奈々の自分探しはこれからというところだった。当初から続編を意識して製作したのだろうが、今作の中で奈々の「これから」をもう少し見てみたい気もした。(了)