「トゥー・ウィークス・ノーティス」

 「two weeks notice(トゥー・ウィークス・ノーティス)」。「2週間前の退社勧告」の意味で、米国では社員が退社に際し、2週間前に会社に通告するのが通例だという。その言葉が映画のタイトルになった「トゥー・ウィークス・ノーティス」(2002年)は、切れ者の女性弁護士と、不動産会社のわがままな経営者の恋模様が描かれる。サンドラ・ブロックヒュー・グラントが織りなすラブコメディーは、オーソドックスで安定感がある。
 ハーバード大卒のルーシーは、優秀で正義感が強く、社会奉仕活動にも熱心な熱血弁護士。生まれ育ったニューヨークの公民館の取り壊しを阻止しようと訪れた大手不動産会社で、法律顧問を務めることに。しかし、経営者のジョージのネクタイ選びから離婚調停まで任されることが嫌になり、ルーシーは「2週間後に辞める」と宣言するが―。
 しっかり者で不器用な女性弁護士と、頼りないけど憎めないセレブな男性の恋の行方は、意外性には薄く、ある程度の先行きが予測可能ではある。しかし、明快なキャラクター設定や、サンドラ・ブロックヒュー・グラントの演技のハーモニーなどにより、「ラブ」と「コメディー」の魅力が確立されており、映画としての品質は高い。
 今作のプロデューサーも務めたサンドラ・ブロックは、ヒロインとしてストーリーの主旋律を的確に奏でているが、それを際立たせるのがヒュー・グラントの硬軟自在の演技だろう。二枚目で、だらしないけど、良心的で、憎めない、という複雑な役柄を、肩ひじ張らずに演じるところは、まさに「見事」の一言だ。

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 ちなみに、日本の俳優でヒュー・グラントと近い立ち居地にいるのは、阿部寛でしょうか。鑑賞中、阿部寛の顔が脳裏をしばしばよぎりました。